2007年08月18日

怪談・品格ある幽霊


「太平百物語」(1732年)にこんな話がある。

三郎兵衛は河内国(大阪府)の豊かな百姓。

夫婦仲も良かったが、突然、妻が死の床についた。三郎兵衛は「お前が死んだら、幼い子を養育できない。出家したい」と言って、しおれた。

しかし、妻はしっかりしていた。「私をふびんに思うなら再婚して。この子をちゃんと育てて」と言うと、息をひきとった。そのうち、三郎兵衛に再婚の話がきた。はじめは承知しなかったが、子供の為と思って、やむなく後妻を決めた。


その祝言の夜、怪異がおきた。

三郎兵衛が宴席をたって、ふと暗がりを見ると、なんと死んだはずの先妻が青白い顔をして、じっと、こちらを見ている。乱れた黒髪で足がない。「後妻をすすめたものの、やはり嫉妬の念が離れず、祝言をねたんできたのか」。
三郎兵衛は恐ろしくなり、嫁いできた新妻に言った。「こういう事情だ。今すぐ別れてくれ」

すると、新妻の面体が急変、急変、先妻が乗り移ったらしく、先妻の声で喋りだした。「のう、三郎兵衛殿。いまのお言葉こそ恨めしい。愛児にようやく母ができた。それが嬉しくて出てきたのです。でも、これで、私も成仏できます」。


以後、この幽霊は二度と出なかったといいます。品格のある立派な幽霊だと思います。

今も昔も、いざという時に芯が強いのも、肝が座っているのも女性なのかも知れないね。



  

Posted by 凛 at 09:42Comments(0)TrackBack(0)太平百物語